播州毛鉤
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鮎毛バリ事典

5 テクニック


その一
 あちこちの釣り場を浮気して歩くよりも、ひとつの釣り場に通って完全にマスターした方が上達が早い。 深場の関係、流れの模様、そしてどこにどんな凹凸があるか。 魚が廻ってくる時間帯など。ひとつの場所を自由に攻撃できる術、それがテクニックである。 誰よりも熟知している川、自分の一番好きな釣り場、そして出魚時には必ずサオを出さないと気がすまないポイントを持つことが重要と思われる。


その二
 毛バリの呼称として、基礎的な呼び方がある。 これは毛バリの名前より重要で、理解しておく必要がある。

当りバリ 当日よく釣れたハリ。また各河川の当りバリもある。 例えば、那珂川の当りバリは熊系に限るとか。1日単位、川単位。
自身バリ 個人の経験とデータにより、よく釣れたハリ。年間単位。
信念バリ 十年以上の自身バリの中から、唯一のものと選んだハリ。
万年バリ 初期、中期そして後期まで一年通して誰にでもよく当るハリをいいう。 またどの河川でもよく釣れるハリ。


その三
 ドブ釣りは、普通の人が考えているようなものではない。 タバコをふかしながら、のんびりとウキを眺めている釣りとはまるで違う。 ドブ釣りは絶えず喰わせてやろうという意気込みを必要とする。 これでダメなら、これでどうか。 喰うまで待つ、そんな消極的なものではない。 あの手この手でアユを誘う。アユに働きかけるのだ。即ち攻撃的スピリットが必要である。
 ―― だが実際の場合、釣れないと、まず自分の選んだ毛バリに不安感を生じ、自分の自身バリにも確信が持てなくなってしまう。 さらに肉体的疲れも重なって、いっそう自信喪失になある。 そんな場合は、一休みして、頭を切り替えることが肝要。 何ごとも忍耐なくば成功はしない。
 それは一種の信仰に近い。 たとえ今魚がいなくても、必ずや俺の自身バリにやってくるに違いないと。… 夢と期待をもって、あと5分の辛抱と自分に言い聞かせる。 自身と忍耐、短期と根気が両立するとかすかなアユの当りが感じられる。 そしてビクには大望のグラマーなやつが入っているということになるのだ。





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播州釣針協同組合